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BTSと秋元康のコラボ中止は当然! 秋元の女性蔑視や極右政権との癒着が問題にならない日本のほうがガラパゴス
秋元氏とのコラボを中止したBTS(UNIVERSAL MUSIC JAPAN公式HPより)
韓国のヒップホップアイドルグループ、BTS(防弾少年団)の日本版シングル(11月7日リリース)に収録予定だった秋元康氏作詞曲「Bird」が、韓国側のファンの反発により急きょ収録を見送られた件が話題となっている。
BTSは、『LOVE YOURSELF 轉‘Tear’』(今年5月発売)と『LOVE YOURSELF 結‘Answer’』(今年8月発売)が、連続でアメリカのビルボード総合アルバムチャート1位を獲得したグループ。
東アジアのグループが総合チャートで1位をとるということだけでも快挙だが、さらに、これらのアルバムはすべて韓国語で歌われており、英語以外の言葉で歌われたアルバムが首位を獲得したという点でも、イル・ディーヴォ『アンコール』以来12年ぶりの快挙でもある。
BTSは日本でも確固たる人気を誇っており、「MIC Drop/DNA/Crystal Snow」は2017年度の年間シングルランキング(オリコン調べ)の13位に輝いている。
そんなグローバルな人気を誇るBTSと秋元康氏のコラボには、多くの人が驚いたとともに、怒りをあらわにした。
問題となったシングル「Bird/FAKE LOVE/Airplane pt.2」の情報は9月13日の朝に解禁され、そこで初めて秋元氏が関わる曲が収録されると発表されたのだが、その情報が告知されるやいなやツイッターを中心にすぐさま炎上した。
BTSのファンが秋元氏とのコラボに拒否反応を示したのにはいくつか理由がある。
ひとつはもちろん、これまでの秋元氏の仕事を見てきて感じた忌避の思いだ。〈難しいことは何も考えない 頭からっぽでいい 二足歩行が楽だし ふわり軽く風船みたいに生きたいんだ〉〈女の子は可愛くなきゃね 学生時代はおバカでいい〉〈女の子は恋が仕事よ ママになるまで子供でいい それよりも大事なことは そう スベスベのお肌を保つことでしょう?〉といった歌詞を問題視されたHKT48「アインシュタインよりディアナ・アグロン」をはじめ、本サイトでも何度も取り上げているように、秋元氏の書く歌詞は近年、女性蔑視的な内容を複数回にわたって問題にされ続けているが、その女性差別的感覚がいっこうに修正される気配はない。
そういった作家性をもつ人物がBTSの歌詞を書くことでどういった楽曲が生まれるか?ということへの懸念がある。
そして、もうひとつは、BTSの歌詞における「リアルさ」に関わる問題だ。
BTSは結成段階からアイドルグループとして企画されていたものではなく、ヒップホップグループとしてオーディションされている。そういった背景も関係して、作詞や作曲にもメンバーが積極的に関わってきた。
また、「防弾少年団」というグループの名前には「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守り抜く」というコンセプトが含まれており、彼らの歌詞には若い世代が直面する悩みを赤裸々に歌ったものも多い。
たとえば、「No More Dream」では過酷な受験戦争に消耗して将来に夢を見出せなくなっている若者の苦悩を描き、また、「DOPE」では“三放世代”といった言葉に代表される世代間格差への憤りを歌っていたりしている。こういった内容の歌詞は、その渦中にいる若者たちの手によって書かれ、歌われるからこそ、切実な訴えとして聴衆に響く。
結局「Bird」は楽曲が公開される前にお蔵入りになってしまったため秋元氏がどのような歌詞を提供していたのかは藪の中だが、どんな内容になるにせよ、そもそも、「抑圧」を与える側の最たる存在である秋元氏が書いた言葉が、これまでBTSの楽曲にあった「リアルさ」をもち得る曲となるのかは疑問だ。
秋元康の女性蔑視と安倍極右政権との癒着に、韓国ファンから抗議の声
日本のファンからもこうした理由で秋元氏とのコラボレーションに批判的な声が上がっていたが、同日夕方頃、韓国でもBTSファンが怒りを表明し始めて以降、事態は大きく動いていく。
韓国のBTSファンと思われる人物により、秋元氏との仕事を続行させることはBTSのアーティストイメージを損なうとの主張が書かれた文書が作成され、その文書の画像を多くのファンが共有した。
「秋元康は右翼的政策の安倍政権に付き従う作詞家」という旨の文言が記されたその文書は、多くのフォロワーによってBTSの日本オフィシャルツイッターアカウント宛にリプライされることになる。
秋元氏と安倍首相の親密な関係は常々指摘され続けてきた。最も有名な例は「FRIDAY」(講談社)に掲載された、安倍首相や見城徹氏(幻冬舎社長)らと共に総理公邸の西階段で「組閣ごっこ」写真を撮影した件だろうが、そういった関係性を背景に、秋元氏は国が主催する仕事を多く受注してきた。
その端的な例は、秋元氏が東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事に選出されているということだろうが、他にも、クールジャパン推進会議のメンバーに秋元氏が入っていたり、また、2013年12月には日本主催のASEAN特別首脳会議の晩餐会にAKB48を登場させたこともある。
前述の文書では秋元氏の歌詞に見られる女性蔑視的な傾向についての記述はなかったが、それとは別に、日本同様、秋元氏の書く歌詞に女性蔑視的な思想のものが少なくない数見受けられることを指摘して、危惧を訴える声も出ている。
そういったファンによる行動はネット上にとどまらず、BTSが所属する芸能事務所であるビッグヒットエンターテインメントのオフィスにも、コラボの中止を訴えた付箋やテープなどが貼られる事態ともなり、問題は時間を追うごとに大きくなっていく。
結果的に、17日になって「Bird」の収録が見送られるとの発表がなされることになった。
コラボ中止のニュースを受けて、特段BTSファンでもなさそうな人たちから「BTSはもう日本に来るな」「これでBTSの紅白出場はなくなったな」などといった声も起きているが、こういった声が恥ずかしげもなく起こること自体、いかに日本の音楽産業がガラパゴス化しているかを端的に示している。
BTSと秋元康とのコラボ中止で露呈した、日本のガラパゴスぶり
BTSは現在、アメリカ10公演、カナダ3公演、イギリス2公演、オランダ1公演、ドイツ2公演、フランス2公演を含むワールドツアーを行っているが、どの都市でも数万人規模のアリーナやドーム会場ばかりなのにも関わらず、すでに全会場のチケートがソールドアウトしている。
もちろん、このワールドツアーには日本も含まれているが(東京、名古屋、大坂、福岡)、客観的に見ればいまのBTSにとって日本の市場は世界各国にまたがる数多い取引先のひとつでしかないし、そういったグループにとって「紅白出場」などたいした価値もないのは言うまでもないだろう。むしろ、なぜ忙しいカウントダウンのタイミングでそこまで重要とも言えない国の一番組のためにスケジュールを空けなくてはならないのか。BTSと世界の音楽産業をめぐる状況を概観できていれば当然共有されている認識が、まったく広がっていない。
今年2月、現在アメリカで最も人気のあるラップグループであるミーゴスが新木場スタジオコーストでのライブをキャンセルした直後、韓国のフェスに出演したのはその象徴的な例と言えるが、もはや日本は世界の音楽産業にとって重要な立ち位置にはない。スティーヴィー・ワンダーが紅白オリジナルソングを作曲していたような豊かな時代は終わったのだ。
そういった変化は、バブル崩壊以降の日本自体の経済的な力の弱体化もさることながら、日本の音楽業界および音楽ファンの考え方の孤立化・ガラパゴス化も無縁ではないだろう。
そして、そういった世界からの孤立は、秋元氏の歌詞をめぐる反応にも表れていると言える。
「Bird」および秋元氏に対して見せた韓国のファンの反応は過剰でもなんでもない。むしろ、国際的な基準から見れば当然のものといえる。
実際、グローバルな舞台に出るような場面で秋元氏と仕事をするということは、国際的な問題になる可能性を抱え込むことと同義である。
秋元氏の女性蔑視問題は上述した歌詞の問題だけにとどまるものではない。秋元氏は過去にも欧米諸国や東アジア各国から握手会をはじめとした疑似恋愛ビジネスを児童虐待や性的搾取として批判され続けてきた。その最たる例が、2013年に峯岸みなみが恋愛スキャンダルをスクープされた後、坊主頭になってYouTubeに動画を投稿したときで、その際は、BBC、CNN、ガーディアン、ABCなどの大手メディアが取り上げ、秋元氏がプロデュースするガールズグループの異様さを批判された。
東京オリンピックの開会式閉会式の演出を秋元氏が手がける可能性はひとまずなくなったが、もしも、秋元氏が手がけるようなことになっていたら、必ず上記のような問題が指摘され議論となっていたであろう。
むしろ、数えきれないほど問題を指摘されながら、今回のBTSとのコラボ中止のような展開にならず、秋元氏がいまだにJ-POP界におけるトッププロデューサーとして君臨している日本の意識こそ見直さなくてはならないものではないだろうか。
(編集部)
最終更新:2018.10.18 03:49
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